小柄と奔も共に、鞘口に密着された植に収まる刀装具の役割を果たす。時代劇を見ていると、小柄を手裏剣みたいに投げるシーンがあるが、あのような行為はフィクションである。小柄は細工用としての小刀、もしくはペーパーナイフとして使用でき、弊は髪を撫で付けて、身だしなみを整えるための道具として用いられた。また奔の柄の先に付属している突起は「耳かき」としての役割を持つ。
常に刀を携帯するのであれば、実用品としての付加価値も一緒に付けようとする考え方は、たいへん面白いが、時代によっては小柄植や弊植が存在しない刀もある。実用品としての価値よりも装飾品としての価値をより重視したためか、これらの小物が実は大して実用性を発揮できなかったためなのかは、はっきりしていない。これら二つは同じような模様で装飾する場合が大部分で、そのような場合は、両者を含ませて二所物、柄に取り付ける目貫を入れて三所物と呼ばれる。やはり時代が進むごとに装飾が施され、素材や技術の進歩もあって江戸時代になると非常に高度で華やかな装飾が施されるようになった。